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2008年11月14日 (金)

ギャラリーいさら「木曽うるし工芸親子展」に行ってきました

9月25日、この日は、別の個展取材で世田谷にいました。
帰りに、だめもとで、恵比寿に向かい、閉店時間ギリギリセーフで滑り込み、
間に合ったのが、ギャラリーいさらさんで開催されていた
小坂公一さんと小坂伸一郎さん、親子ふたりの漆展「木曽うるし工芸親子展」でした。

もともと、漆に興味があり、いつか展示会をみたいと思っていました。
9月に染色の小島貞二さんを取材させて頂いた、ギャラリーいさらのオーナーさんも、
漆が好きで、漆の作家さんの個展をよく開催されているとお聞きしたので、
機会があればまた寄りたいなと思っていました。

今回、作家さんはいらっしゃらなかったので、作家さんからお話しは、伺ってません。
ギャラリーいさらさんには、撮影の許可を頂きましたので、
展示風景と展示作品のお写真をお楽しみいただければ、と思います。

同時に、「漆」のことを全く知らず、超初心者のため、
いろいろと本などで調べ、わたしなりに、わかったことをまとめてみました。

そんなことも知らないの? 常識よ、という方も、
そういえば、僕も私も知らないかも、という方も、宜しければ、漆レポート。
小坂公一さん、小坂伸一郎さんの漆作品の写真を鑑賞しながら、
御読みいただけたら、さいわいです。

■花信風さんでの出来事■

…と、書いたものの、なかなか調べる作業が進みませんでした、すみません。
頭の中で「調べなくちゃいけない」というのが重荷になっていたみたいです。
はじめても、すぐ瞼が重くなってしまい。。。なかなか前へ進みません。。
そうこうしているうちに、10月10日に、
埼玉県所沢市にあるギャラリー「花信風」さんへ、モラ展を鑑賞しに行きました。
その時に、ふと、雑談から、漆の話をしたのです。
そうしたら、ギャラリーの風千さん、
「あら♪ 私、漆、大好きよ! いつも使ってるわよ! 見る?」
と、普段お使いになっている漆のご飯茶碗やお重などを見せて下さったのです。

ええええーーーーー☆★☆
その、色艶のきれいなこと、深いことと言ったら!!!

一緒に見に行った作家さんと二人で、かぶりつきで拝見しました。
触らせてもらいましたが、軽いし、光沢が凄い。つやつやぴかりん。

風千さんは、もう子どもの時、親御さんの代から
お箸とお椀が漆、それが当たり前のご家庭で育ったそうです。
だから、学校で給食がはじまり、「れんげ」でご飯やお汁を頂く。
お箸はなく、器も全部味気ないアルミ食器。
子ども達は、食べずらいので、顔を近づけたり、姿勢悪く食べる姿が多く見られ、
子供心に、とってもかなしかったそうです。
(ちてなの世代ですと、銀色の先割れスプーン一本で
 ご飯やお汁を頂いてましたっけ)

お嫁入りする時も、漆器のお弁当箱などを注文して作ってもらったり、
今でも、ずっと気に入ってお使いだそうです。

近所のお友達の奥様たちと、皆さんで、重箱にお弁当を詰めて
ピクニックならぬ食事会をされることもあるそうです。
その時は、それぞれ、皆さん、ご自分が好きな漆器の重箱を用いられ、
「私は、これが好きなの」 「私は、こういうのが好きだわ」など、
美味しいおかずに舌鼓を打ちながら、漆器自慢ならぬ御披露目もできる、
とても楽しい時間なんだそうです。

このとき見せて頂いたお茶碗は、
風千さんと、風千さんのご主人様のは違っていて、
ご主人様のは、ぽこぽこというか、筋がはっきりしていたようなものでした。
「夫は、こういうのが好きみたい。私は、こういうのが好きなの」
「漆は、いろんなものがあるから、人それぞれ好きなものは違って当然だし、
 勿論、尊重します。でも、自分がどの漆が好きかというのは、
 たくさんあるから、見て行くうちに、だんだんわかってきますよ」
とのこと。

お昼ごはん、自宅で一人でも、時には、漆のお重に入れて食べているそうです。
仕事の途中で一旦帰ってきたご主人様に
「ひとりのお昼ご飯も、ちゃんとお重に入れて食べて偉いねえ」と感心されるそうです。

「漆は高級で、なかなか買えない。確かに、いいもの、本物は値段が高いです。
 でも、使わなくちゃ。使えば使うほど、味が出てくる。神経質に扱わなくていいの。
 充分、日常生活、普通に使えるし、とっても丈夫で長持ちする。
 人間、一生の間、ご飯、何回食べると思う?
 生きている間、食事をする時間って、どのくらいだと思う?
 食事が命の基盤だから。人生の基本。
 食事を大切にすることが、命を大切にすることじゃないかしら。
 その食事の時間を、食事のたびに何度もよく使う食器だからこそ、
 温かいものは温かく、さめにくく、冷たいものは冷たく、
 自分の好きな、自分の手にすっぽり納まる、使い心地のよい、
 そんな器で気持ちよく、有意義に食事を楽しめたら、もっと素敵じゃないかしら」

・・・というようなことを、お聞きし、かなり感動しました!!!
わたしは、まだ漆の食器を使ったことが無かったし、
わたしの回りでは、漆器を普段の食生活で使ってる人はいなかったので、
実際に使っているという、漆器を見せて頂いたことは、凄く説得力がありました。

そして、
「私も、若い頃、安くていいや、と、安いものをかったことがありました。
 でも、すぐに使えなくなってしまって、母親に、
 今度買うときは、もう少し高い物を買うといいわよと、言われました。
 漆器は、自分で実際に買って使ってみないと、わからないことが多い。
 でも今は、デパートや百貨店があるんだから、
 食器売り場を見て回ったらいいのよ。いろんな漆器があるわよ」

と言われたときに、ぴこーん☆ ときました!
なんだ、そうだよ、散歩しながら漆器を目で楽しめばいいんだ!
なんで、そんな簡単なことに気付かなかったんだろう★

今まで、高級で高価で手の届かない、遠い存在だった漆が
いっきに近くなった気がしました☆
こうして、帰り、いてもたってもいられなくて、
一緒に行った作家さんと所沢の百貨店で、漆器売り場を見て回りました。
あったあった、面白いくらい、漆器がいっぱい~!(当然ですねw)
こんなに、いろいろあるんだー! と、鼻息荒く、今更ながらに実感。
でも、箸ひとつとっても、漆100パーセントと比べると、
何やらカタカナの材料が入っていると値段が安くなるようです。
これが、漆マジックか!? 奥深いぞ~☆

断然に、ぐっと、漆に親近感がわいたところで、
いっきに調べるモードもアクセル全開に☆ 以後、まとめたものです。

■漆クエスチョン1 漆とは・・・■

漆というのは、木の樹液で、天然物です。昔から、様々な用途で使われてました。
遡れば、縄文時代、青森の古墳から5500年前の漆塗りの高杯が出土され、
北海道の遺跡からは、約9000年前の漆製品も見つかっています。
朱の漆を施した石棺も見つかってます。縄文時代ですよ、縄文時代! 
そもそもは接着剤、防水剤として使われ、使ってみたら、艶があって美しく、
木目細かい感触が楽しめる。接着力があるので、飾りをつけられる、加工も出来る。
耐久性もある。こうして、漆の良さが次から次へと沢山見つかっていき、
広く日本に定着していったんだそうです。

漆というと、高級というイメージがどうしてもありますよね。
ぱっと浮かぶのは、お正月に使う重箱や、屠蘇器とか、
端午の節句の一汁一菜とかでしょうか。わたしの自分の家には、ありません。
実家には、あったのかなあ。よくわかりませんが、菓子入れか、
お盆は漆だったのかも?(似せてただけかも?)というのが、
あったかもしれませんが。自分で買って使ったことは、一度もありません。

漆といえば、伝統工芸品。触ることも出来ない名品も多いですが、
実生活に即した飲食器として作られ、高い価格ではなく、
広く用いられていたのも事実です。昔、日本の寺院では、
使いやすく丈夫だったからという理由で、漆器が使われていたようです。
鎌倉時代では、一般庶民や武士の間でも、ごく普通に
食器として使用されていたと推測もされています。

食器以外では、平安時代には、部屋の中に漆を塗って蒔絵をほどこす
ということが流行ったようです。平等院の鳳凰堂や中尊寺の金色堂などは、
当時の螺鈿や蒔絵など、漆工技術が集約されているものです。
京都北山の金閣寺(鹿苑寺)の外壁も漆塗り、
正倉院の宝物にも、漆が使われているものが多く、
安土城、大阪城なども漆で装飾されていたそうです。
戦前には、船舶の装飾にも用いられ、
昭和初めには、列車の内装へと発展していきました。

漆は「ジャパン」とも言われています。
17世紀はじめ、桃山時代にヨーロッパに向けて、大量の漆器が輸出されていました。
「南蛮漆芸」と呼ばれ、当時のヨーロッパの好みを取り入れ、キリスト教に関係した
器が代表的だったようです。ポルトガル、スペイン、オランダなどが輸出相手でした。

京都辺りで製作されていたとされ、常に50人くらいの職人が昼夜兼行で
製作していた記録もあり、このことから、とても需要が多かったそうです。

今の時代の食器は、陶磁器、焼き物、いろいろなものがあります。
それこそ、プラスチックだったりもします。値段も安いものもいっぱいあります。
ちゃんとした漆椀などは、ほんとうに値段が高いです。

よく、漆は、洗剤を使ってはダメだとか、ぬるま湯で流して、やわらかい布で拭いて、
乾いた綿布で乾拭きしなければならないと聞きますが、これは誤解だそうです。

物を大切にして、親から子へと受け継ぐ、古き良き、昔の日本人の習慣の
名残ではないかという意見がもっともらしいかなと思います。
実際には、ここまでやらなくても大丈夫のようです。
合成洗剤は、成分的には漆にとってはよくないそうですが、
10年持つのが、8,9年になる、くらいの差しか無いようです。
陶器など固いものと一緒にガチゴチ洗うのは、
さすがに傷つきそうですから、やめたほうが良さそうですが、
普通の食器と同じように扱って、別に問題は無いようです。
かえって丁寧に拭くより、ザアザア流したほうが痛まず、
布巾でさっと拭けば良いという意見も多いようですよ。
(といっても、電子レンジでチン☆は、よしたほうがいいでしょうね。
 あと、食器洗い機や食器乾燥機も避けたほうが良いようです)

毎日、漆器を使ってみれば、自分で納得がいくはずと言う意見、お声が多いです。
普段使う習慣がなくなっているから、実感として扱い方がわからないのではないか。
漆とは、天然で、生きものである。これを頭の片隅においておいて、
変化していくことを楽しむぐらいの気持ちを持つと、良さそうです。

■漆クエスチョン2 漆器の良さとは・・・■

漆器は、いろいろな種類があるからこそ、楽しめ、それが、醍醐味のようです。
素材の木地をいかしたもの、色漆が美しいもの、飾りが楽しいもの、
加工が出来る、これらがよく言われる、漆器の良さです。

漆は天然のものなので、使えば減っていくさだめです。
使い込んでいるうちに、木目が浮かび上がってくる。
漆が磨り減っていくから、つやが増して綺麗になってくる。
次第に内からの光が出るようになってくる。
例え傷がついても気にならなくなってしまうような肌の美しさが自然に出てくる。
転んで傷を負っても、体内からの自然治癒力で、元に戻ろうとする、
人間の組織細胞と一緒ですね。柔軟性のある強さこそ、
漆が生きものであるという所以のようです。
化学塗料だと、こうはいかないでしょうね。
塗った時が一番綺麗で、あとは汚くなる一方じゃないでしょうかね?
車なんかは、まめに洗車してワックスかけないと、ピカピカは保たれない。。。
使えば使うほど輝きを増すのが、漆の特性なんですね。

漆器のお椀は、実は、自由に使えます。器自体が、使用法を限定しない、
制限していません。そういえば、そうかも。お椀にも、お皿にも、蓋にも使える。
仕舞うのも場所をとらず便利。花活けにも、菓子器にも使える。
修理して塗りなおせば新品同様になる。漆器ならではの、飾りの美しさ。
感触の良さ、温かみ。毎日使うこと、使ってみなければわからない、
これが大前提であり、幾ら外見だけ見ても、本来の漆の良さは見えてこない。

使っているうちに、その、持ち主の手に馴染み、
色艶がいっそうでてきて、使ってる人なりの美しさを出してゆく。
漆器に限らず、使わないでおくと、よく言われませんでしたっけ?
「顔色が悪くなる」。子どものころ、きいたことあります。
物でも、ふてくされたりするのかなと子ども心に思ったことがあります。
物でも、人間と同じで、大事にされてるかどうかって、わかるんだなあと。
道具は使ってあげることで、初めていい道具となる。
側において始終、触り、使い、気にかけることが良さをより引き出すことのようです。

漆って、黒と赤の2色? が有名ですね。「黒漆」と「朱漆」と言い、
黒漆は、鉄粉、朱漆は朱を入れて発色させるそうです。
平安時代、「朱漆」は貴重品で、位の高い人しか使えませんでした。
朱色のほうが、格が上ととられていたんですね。
朱の漆は、夜の行灯の明かりに、非常に映えたようです。
そのため、昔は、夜のおもてなしでは朱漆が使われていました。、
当時、油の値段がとても高かったので、夜、お客様を呼べるお家は、
お金持ちだけだったようです。

尚、けんちん汁などは、朱漆、おすましなどは、黒漆、
料理の盛り付けを楽しむのには、黒のほうが高級感がある場合があり、
こうじゃなくちゃいけない、という、決まりは特に無いようです。

また、色ですが、黄色や緑、藍、白漆もあるようです。どれも必要な量を
計算して、漆に負けない強さの顔料を混入して作るそうです。

■漆クエスチョン3 漆の性質と下地つくり■

漆には不思議な性質がありました。普通、乾燥というと、水分を蒸発させること、
水気が多いと時間がかかるもの、と思いますが、
漆は、水分がないと乾燥しないのです。
水分が少なければ少ないほど、乾燥が遅くなってしまうそうです。

漆が乾燥するとき、酸化作用で液体から固体に変化します。
水分が蒸発する時の酸素が、漆の酸化作用を促進させるのだそうです。
いったん固体になった漆は、とても強靭になり、滅多なことで融けることのない、
酸、アルカリ、塩分、アルコール物質におかされない、
耐水性、防腐性、電気の絶縁性も高くなるのです。

蜂が巣を作るとき、漆で木に密着させる習性がありますが、
このように接着剤としても優れ、陶器が割れても漆で接着することができるそうです。

ここで、ざっくばらんに。漆器の下地つくりって、どんなでしょう?
上塗りとは、器を綺麗にする為の仕事で、
上塗りすると全く見えなくなるのが、下地つくり。
下地つくりは、素地の木を守るための仕事です。

下地つくりをしないものもあります。弾力性を生かした竹籠などは、
じかに漆を塗って美しく見せる。素地に木材を使う場合でも、
木目の美しさを生かすために、下地をほどこさないものも。
鎌倉彫りのように、木に彫刻をするものは、下地をほどこさないことがあります。

一般的な普通の下地つくりは、
よく乾燥させる⇒ とったばかりの漆のことを、「荒味(あらみ)」という。
そこからゴミをろ過したものを、「生漆(きうるし)」と呼ぶ。
余分な水分を吸い込まないように、この生漆を塗って、鮫皮などで磨く。
これを「木地固め」という。

⇒器の弱い部分、痛みが出やすそうなところ、上縁や椀の内側の底に
 布を張り補強する。これを「布着せ」という。

⇒下地用の漆、3,4回へらで塗る。
 塗るたびに、いちいち乾燥させ、その都度磨くので時間も手間も非常にかかる

⇒下地用の漆のノリや地の粉、砥の粉などを水を使って生漆に混ぜる。
 この配分は、人や、産地によって使う粉も違うそうです。
 これら下地塗りは「地付け」ともいう。

⇒だんだんのりを少なくして、粉を細かいものにし、最後は粒子の細かい
 砥の粉を混ぜただけの漆で綺麗に仕上げる。これを「本堅地(ほんかたじ)」という。

・・・このように、下地つくりだけで、こんなにも工程がある!

その理由は何故か。
漆は丈夫ですが、いっぺんに厚く塗ると返って脆くなってしまうのでした。
薄く何回も塗っていくことで器の丈夫さが生まれる。
磨く作業は、肌を綺麗にし、次に塗る下地との接着をよくし、
漆をつきやすくするためのもの。
うーん。すべて理由があるんですね。理に叶ってるわけだ。

塗り、乾燥、磨く。この繰り返しの作業の手間代が、漆器の値段、
時間をかけて純粋に作り上げていく作業の値段とも言えるようです。

下地つくりのような目立たなくて、地味な仕事の中にこそ、
使う物の美しさを出したい、保ちたいと思う気持ち、
物自体の強さ、丈夫さを大切にし、長持ちさせたい気持ち、
自分の仕事の腕、技量を、あますことなく発揮したい気持ち。
職人さんひとりひとりの思い、気持ちが、工夫を生み、
技術を磨き、経験を蓄えていく。職人さんの営み、職人さんの思い、
すべてが入っている作業といえるようです。

■漆クエスチョン4 実際の漆って、日本にあるの?■

漆の木は中国、朝鮮半島、ベトナム、タイ、ラオス、ミャンマーなど
東南アジアに自生しています。5~6月に開花して秋に紅葉します。
日本でも古くから、江戸時代には各藩が競って保護し育成につとめ
全国各地に植栽されました。しかし、戦時中に乱伐採され減少してしまい、
現在、岩手、茨城、栃木などで栽培されていますが、
国内で使われる漆の9割以上が外国産となっているそうです。

では、漆はどうやって採取するのでしょうか。
6月から11月までの間、漆液を採取する「漆掻き作業」
というものが、以下のような手順で行なわれるそうです。

◆目立て 
樹齢10~15年位に達した漆の幹に、採取する位置の目印とするため
地上から20cm位のところで傷をつけ、そこから上へ40cm毎に傷をつける。
漆の木は、傷つけられると刺激を受け、傷口を塞ごうとして、
樹液を傷口付近に集めてくるので、効率よく漆液がとれるのだそうです。

◆辺掻き(へんがき)
5日目毎に、目立ての上に一本ずつ溝を切り、分泌してくる液を掻き取る。
この作業は、6月から9月の間行なわれ、時期に寄って長さを変えるようです。
あまり長くすると、一気に木勢を弱らせ、痛めさせてしまうので、
沢山漆をとるために、溝の長さを変えてゆくようです。

◆裏目掻き
10月になると、木の皮も厚く堅くなってくるので、
表皮をえぐってから中に傷をつける。
その後、木を一周する溝をつける「止掻き」で終了。
漆の樹液溝が切断されるので、もう樹液は出なくなるそうです。

これらの作業は、だいたい朝の5時から。早朝ですよ!
樹液の分泌が、木の中の温度と外の温度の差によって生じる
圧力によって影響するので、早朝の方が採取しやすいようです。

こうして、6月から11月まで半年かかって、コップ一杯ぐらいしかとれない。
きわめて能率の悪い仕事であるといえます。

ひょえー!わたくし、この工程をみて、こんなに痛い(?)思いをして
傷つけられて、搾り取るだけ搾り取られて(?) 漆の木って、
なんて大変、命がけなんだろう! と、ちょっと思ってしまいました。
しかし、この採取方法を考えた、探し当てた方がいるんだから、
人間、祖先様の知恵、生きていく為の探究心、学習能力には、
頭が下がる思いで、いっぱいです。。。

■漆クエスチョン5 下地つくりのあと・・・■

こうして、漆の液を取るのも大変、下地つくりも大変、
時間と根気が要る、果てしなく遠く地道な作業でした。
さて、下地つくりの後は、いったい、どうなるんでしょうか。
ここからは、そのあとの工程、ざっくばらんにまとめました。

◆素地(きじ)づくり
日本では、木材を素地にした漆器が一番多く使われていて、
その木地を作るのが、お椀などを作る、「椀木地師」、
座卓の脚などを作る「朴(ほお)木地師」、
重箱やお膳などを作る「指物(さしもの)木地師」、
手桶、弁当箱などを作る「曲物木地師」など、
専門の職人さんが作るのだそうです。

◆素地固め
本格的に漆を塗る前に、割れ目が無いか、補強する。
補強後、乾燥させ、生漆を塗る。
これは、乾燥した木地が余分な水分を吸収しないようにするため。
この後、鮫皮や細かなサンドペーパーなどで木地を磨く。

◆布着せ
器の弱い部分、痛みが出やすそうなところ、
上縁や椀の内側の底に布を張り補強する。

◆塗り・乾燥
塗りがこれまた過酷です。ここは割愛。
3回下地を塗って、塗り上げるたびに乾燥させ磨きあげていきます。

・加飾
一般的に、加工したり、飾ったりする技法は、主に、以下の様なものがあります。
▲蒔絵 無地の漆を飾る技法
▲沈金 漆器の表面を彫って金箔や銀箔、金、銀粉などを埋め込む技法
▲螺鈿(らでん)
      貝殻を板状に加工し、様々な形に切り、漆に貼り付けて模様を表す技法
▲彫漆 漆を何回も塗り重ねて、それに文様を彫刻し、美しい漆の層を見せる技法
▲蒟醤(きんま)
     漆塗りの上に線彫りし、そのくぼみに色漆を平らに象嵌(ぞうがん)する技法
▲存星(ぞんせい) 色漆で描いた上に線彫りする技法

こうして、出来上がる漆器ひとつひとつ。こんなに大変で、
こんなに手間がかかって、こんなに技術が必要なんだなと改めて知りました。
専門の職人さんもいれば、おひとりで木地作りから加飾までされている方も
いらっしゃるでしょうから、相当な時間がかかっていますよね。
なんか、血の気が引いてきましたよ。しっかりしなくちゃ! 酸素酸素!

■漆クエスチョン6 漆はなぜ高いのか■

よく安物、にせもの、ほんもの、高級品、という声がありますが、
漆は、見ただけでは、ほんものか、安物か、区別がつかないことが多いそうです。

素地は木製で、いろいろ下地を塗って、そこに上塗りをする。
この段階で、素地が合成樹脂のものもあるし、
木製でも下地を省いて、いきなり上塗りをするもの、
漆を使わず、化学塗料を使ってるもの、さまざまで、
どんなに手間をかけて下地の仕事をしても、
上塗りしてしまえば見えないので、判断が難しいのだそうです。

下塗りの手間加減、上塗りの手間加減。
合成樹脂の素地に、直接漆をスプレーで塗装したり、
圧縮素材の素地で、内側に漆を手塗り、外側はカシュー塗装、
蒔絵の印刷だってありますし、木の素地を布着せずに、
下地はスプレーで上塗りしただけというものもある。
これら、ひとつひとつ言われてみないと、わからないし、
言われたところで、わからない。それがわかる目安が、価格なのかもしれません。

言える事は、合成樹脂や、化学塗料を使ったものは価格も安く、
大量生産が出来る、ということですね。
漆器は、ひとつひとつが地道な手作業であり、ひとりで同じものを
何百個と短時間で作ることは不可能。ちゃんと下地がしてあるものは
「布着せ本堅地塗り」など表示してあるそうなので、
これらを目安として、あとは、自分で確認して使っていくうちに
自然と漆器の見方に慣れ、漆器に対する目が養われていくのだと思います。

そうはいっても、一般的に、だいたい、
1万円くらいがわかりやすい、とっつきやすいでしょうか。
所沢の百貨店で、漆器売り場を見て回った時にも、感じました。
箸ひとつとっても、値段がちょっとずつ違う。何をどこに、どう使っているか、
どのような工程を経て作られたかによって、微妙に値段は変わる。
それは、どのくらい手間をかけたかによる、時間と労力と技術とコスト。
それらが混ざり合って打ち出されるのが、価格。
作家さん、職人さんの汗と涙と血の結晶。
これが、漆マジックなのですね。奥深いでございます~☆

花信風の風千さんの、お使いの漆器を見て思いました。
買った当時は、ちょっと高い、頑張った一万円だったとしても。
その後、3年、5年、10年持ったなら。
一万円で買ったから、ずっと一万円ではないんですね。
一万円で買っても、一万円以上の価値になっていくんですね。
そうなるか、ならないかは、使っている人次第なんだと感じます。
高いか、安いか、価値感は人それぞれです。
あなたが、わたしが、大切に「使わせていただく」という気持ちがあれば
ものの値段、数字をはるかに超えたところで、生きながら活かされることでしょう。

■漆クエスチョン7 日本にはどれだけ漆器があるの?■

例えば、芸能界、芸能人。人気が無くなれば、
いずれお声も掛からなくなり、求められなくなり、
ブラウン管から消えてゆきます。哀しいことですが、
そのようなことは、よくあることのようです。
使われなくなったものは、どうでしょう。誰からも必要とされず、
見向きもされず、使われることの無くなったものは、
いつしか、すたれてなくなっていきます。現実とはなんとも厳しいものです。

でも、漆は、もうずっと昔から「ジャパン」と呼ばれ、
こうしてたくさんの職人さん、作家さんたちから作られ、
「漆っていいわよ♪」と使われ、愛され、大事に、大切に使ってくれる、
沢山の人に支えられ、今尚、静かに息づいています。

日本各地で、漆器は伝統工芸として作られていますよね。
ざっと代表的なものを調べてみましたが、それでも結構ありました。

●日本各地の漆の伝統的工芸●

・青森 津軽塗   ・秋田 川連漆器  ・岩手 浄法寺塗、秀衡塗   
・宮城 鳴子漆器   ・新潟 村上木彫堆朱、新潟漆器 
・福島 会津塗   ・神奈川 鎌倉彫、小田原漆器   
・長野 木曽漆器   ・富山 高岡漆器   ・岐阜 飛騨春慶    
・石川 輪島塗、金沢漆器、山中漆器 
・福井 越前漆器、若狭塗   ・京都 京漆器  
・和歌山 紀州漆器   ・香川 香川漆器
・岡山 郷原漆器   ・山口 大内塗   ・沖縄 琉球漆器

この他にも、個人で作家さんとして漆を用いられてる方も
沢山いらっしゃいますし、まだこれから盛んになる所もあるかもしれません。
漆芸は、わたしが知らないだけで、日本各地で作られているんですね。

普段、私たちは、目の前にあるものが、いったい、何で出来ているのか、
あまり考えていないことが多いような気がします。(わたしだけかな?)
99円ショップ、100円ショップなるものが身近に便利に溢れています。
そうかと思えば、ブランドショップもありますし、百貨店もあります。
いらなくなったものを売る、リサイクルショップもあります。骨董品屋さんもあります。

今、わたしが使っているカップにしても、食器にしても、お鍋にしても、
フライパンにしても、洋服にしても、何でどう作られているか、
あまりまじまじと考えたことも無いかもしれません。
これは、プラスチックなのか、木なのか、コンクリートなのか、
粘土なのか、全く考えることも無く、意識することも無く。
ぱっと、
「これって、何で出来てるの?」と訊かれたら、答えに困るものばかりです。

それをひとつ作るのに、自分がご飯を食べている間、眠っている間、
どれだけの時間を経て、人の手をかかってできあがっているのか。
さあーーーーっと、血の気が引くほど、わかっていないことが多いです。
わたしが暢気に欠伸して、転寝したり、ヒャックリしている間に、
黙々と、ひたすらに、作っている人たちが、いる。という、紛れもない、事実。

今回、ギャラリーいさらさんで、漆の展示会をみることができたこと、
所沢の花信風さんで、漆器を見せて頂き、お話が聞けたこと、
小坂さん親子の作った漆器を見て、漆のことが全くわからないのに
感想を書いていいものか頭を抱え、夢中になって調べて、
調べた後で、この展示写真を見てみると、
もっと、ゆっくり、じっくり観ればよかったと、勿体無く感じました。
でも、おかげで、わたしは、漆に一歩近寄ることができました。

まだまだやっと入り口に行く手前かもしれませんが、いいんです。
これからは、百貨店の食器売り場でも、商店街の店先でも、
作家さんの個展でも、これってどんなふうにできたんだろう、
君はどうやって生まれてきたの? どういうふうに使ったら、かっこいいかな、
綺麗かな、どうしたらこの子は嬉しいかな、喜んでくれるかなあ、
いろんな角度から眺め、想像して、観て、感じていきたいです。

そして、いつか、自分のお気に入りの「これが好き♪」と思えるような
漆器に出会える日を夢見て、今回のレポートを終わりにしたいと思います。

木曽うるし工芸の小坂公一さん、小坂伸一郎さん、どうもありがとうございました。
いつか、お話を伺う機会があれば、お目にかかれる日を楽しみにしております!
ギャラリーいさらさん、花信風さん、どうもありがとうございました☆

★小坂公一
  1949年 長野県木曽平沢生まれ
  国画会会員、国展にて工芸部奨励賞受賞
  小田原城ミュージアム内漆塗り壁面制作
  各地で多数個展

★小坂伸一郎
  1976年 長野県木曽平沢生まれ
  1999年 宝塚造形芸術大学卒業
        日本宝飾クラフト学院にて彫金を学ぶ
  2000年 長野県上松技術専門校にて木工を学ぶ
  
●ギャラリーいさら   http://ameblo.jp/g-isara/
 東京都渋谷区恵比寿1-26-19 カラコル5-1F TEL&FAX: 03-3446-8878(会期中)
 問合せ: TEL&FAX 043-263-2094(伊藤) 交通: 恵比寿駅東口より徒歩6分

●素敵な漆器を見せてくださった、花信風さんの取材レポート

----------- おまけ・小話 ---------------------

漆と全く関係ないのですが、
実は、この日、もうひとつ嬉しい発見がありました。
花信風さんには、草木染の大版ショールが展示してあり、
とっても綺麗なのですが、

昨今、綺麗でお洒落でカッコイイ女性は、皆、
華麗に知的にショールを首に巻き、
優雅に肩から流しているではありませんか。
あれがねえ、羨ましくて憧れです。

あんなふうに颯爽とかっこよく、気に入ったショールを
首に巻き、肩で揺らしながら歩きたいものだ!

・・・でも、巻き方がわからなーい(汗)
皆、あれは、いったいぜんたい、どうやって巻いているのだ??
本やネットでも出てるけど、いまいち、よくわからない。

すると、そんな小心者ちてなに、風千さん、
ショールを実際に巻いて
「こうするといいのよ」「こうしたり」「こうとかね」
「ちょっとお出掛けはこうで」「フォーマルなのは、こう」
と、いろんなアレンジを、目の前で、巻いて見せてくださったのです!

わ~♪ ほへ~♪ うひょ~☆ すげーすげー!! 
そうやるんだー! お手手ぱちぱ☆ 感激・感動の坩堝★
でも、いまいち、実際どうやって巻いてるのか、
わかっていなくて、瞼もぱちぱちしてたのが、ばれたのか(笑;)

風千さん、ちてなの首に実際に巻いてくださいました。
ふ~ん♪ お母さんみたい!(すごく嬉しい*)

うわー!うわー!うわあああ!
鏡に映る、風千さんが巻いてくださったショールから
顔を出す自分を見るちてな。
今まで見慣れない自分に嬉しいやら恥ずかしいやら♪

興奮して帰宅し、アジアンショップで一目ぼれして買ったのに、
短すぎて首に負けなくて、ほっておいた、
レインボーカラーの縦縞のショールを手にとる!

よくよく見てみたら、薄いけど、重なっていた。
はがしてみたら、離れて、広がって、充分に首に巻けた(大笑*)

そこで、やってもらった、見様見真似で、首に巻いてみた。

・・・できる!あたし、首に巻けるううう!

そこには、あれほど
「あれって、みんなどうやってるんだろう?」
と、うっすら疑問に思いつつ、
「どうせ、あたしは、やんないから、いいや」
とほっていた姿が、そこにあった。

うううううう嬉しい~~!!!!!(涙*)
はじめて、ひとりで、ショールが巻けた喜び。
風千さんに感謝!!! 
以来、うきうきるんるん♪で、首に巻いて出掛けている。

風千さん、ありがとうございまーす♪
この冬は、首元がいつも、にこにこるんるんです*

(・・・ちてなが、どれだけ不器用で、間抜けかが、
 よくわかるエピソードではないかなと(苦笑;)

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