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2007年11月 9日 (金)

猫の額 己夢さん個展「ネコノタネ」 

10月24日、高円寺の猫の額さんで開催された、
己夢さんの個展「ネコノタネ」に行ってきました。
己夢さんは、昨年の暮れぐらいに猫の額さんで初めて知り、
展示販売してある、ポストカードや原画に魅かれて、
是非、個展の時は、取材したいと、ずっと思っていました。
行った時は、最終日。2年ぶりの個展だそうです。
己夢さんにもお会いできて、うっとりと、楽しい時間を過ごしてきました。

さて、己夢さんといえば、切り絵と、立体作品を創られています。
どちらが先だったのでしょうか?

「粘土で立体作品を作ったのは、2000年で、
 切り絵は2002年からです。
 動物雑誌の出版社に勤めていて、雑誌のイラストを描いたり、
 雑誌の小物を作ったりしていたんです。
 粘土でハムスターを作ったりしているうちに楽しくなって、
 大好きな猫をモチーフに作ろうと思いました」

「最初に考えたのは、自分のキャラクターを作りたいということ。
 猫の作品は多いし、猫作家さんもたくさんいます。
 他の作家さんとの区別ができて、お客様から見て、
 一目で、わたしの作品だとわかるようなものを。

 まず、いいなと思った猫のスケッチをどんどんしていきしました。
 そのうち、家で飼ってる猫を描いてて、おでこにMの字みたいな
 柄があったことに気がつき、それを描くのに、ぐるぐるっと
 うずまきのように描いてみたんです。あっ、これはと思いました」

確かに、己夢さんの猫ちゃんは、
顔や身体に、なるとみたいなくるっとしたマークが入っています。
とても特徴的で、わたしも、そこに魅かれたのです。

「最初って、自分で描いていても、どうしてもマネから入るんです。
 それでもいいんですが、いつかつまずいた時に、
 自分のオリジナルを作らないといけないという、壁にぶつかるんです。
 自分の作品を見てもらいたい、気に入ってもらって、
 連れて帰ってもらうためには、私の作品だと、わかってもらえるための
 ワンポイントが、とても重要だと思ったんです」

この話を聞いて、さすがだなあと思いました。
雑誌や出版に携わる、イラストやデザインのお仕事をされていると、
最初から、そういう観点で物事を考えられるんでしょうか。
わたしなどは、全然そんなこと考えた事も無かったです。
でもそういえば、出版・編集の仕事をしていたオーナーに、
きゃらくた~を描いてるときに、
これだと、どっかにありそうだよねと却下されることがありました。
もっと、なんだかよくわからないような、ちてならしいものがいいと
言われた事がありました。通ずるものですかね?

「キャラクターができて、立体を2年やっていくと、
 平面も作りたくなったんです。でも色鉛筆やアクリル画は
 やってる方が多いし、難しい。どうしようかと思ったとき、
 自分が中学時代、切り絵クラブに入っていたのを思い出し、
 それでやってみよう!と思ったんです。
 切り絵のいいところは、絵の具を乾かす時間がいらないこと。
 絵の具だと、修正するのに、乾くのを待ってからですから、
 時間がかかる。待ってる時間がダメなんです。
 その点、切り絵は、自分のペースでできますからね」

切り絵クラブに入っていたとは、驚きです。
切り絵だと自分のペースでできるというのを聞いて、
いろんな価値感の方がいるんだなあと、ほんと思います。

「切り絵は、簡単に説明するとベースになる下絵を描きます。
 トレーシングペーパーを重ねていって、色やデザインの重なり具合を
 合わせながら、バランスをとっていきます」

理数系が苦手で、立体的なことが苦手なちてな。
聞いてるだけでは、よくわかりません。

「まず、自分の描きたい大きさと作品の雰囲気をイメージします。
 次に額を選んで、下絵に入ります。
 猫を主体としてモチーフ、季節やシーンをあてはめていきます。
 だんだん、頭の中でイメージがわいていって、
 切ってるときが一番楽しいです。
 いつか、細長い円形の額とか、特注の額で作ってみたいです」

左の「輪」という作品は、額がとても立派で目が行ってしまいました。

「これは、額が先にあってイメージして作りました。曼荼羅ですね。
 蜘蛛や、金魚、鳥、蝶など、自分の身近にある生きものを描いています。
 今回の個展は『ネコノタネ』ということで、
 おおもとの命というものをイメージして作品を作りました」

命の輪廻。命と時間は切っても切れない関係です。
繊細でいて、静かな迫力があって、いつまでも魅かれてしまいます。

右隣は「ゆう」。そよいだ風に撫でられて、
なんだか、こっくり転寝してそうな猫ちゃんです。
ひらがなで「ゆう」という題名ですが、意味はあるんですか?

「夕方の『ゆう』とか、『悠々と』、『悠然』などの、『ゆう』です」
左上が夕陽の金色でしょうか。優雅な『ゆう』もあるかも?

この切り絵に使う和紙も、己夢さんがその都度、
手漉きの和紙を染めるのだそうです。

「私の場合、気に入った色の和紙が見つからないと、
 自分で染めてしまいます。
 自分で染めればボカシ具合も好きなようにできますし。
 手漉きの和紙は機械漉きよりも厚く、繊維も長くて丈夫です。
 洋紙の方が切りやすいですが、和紙の方が表面のざらつき感と
 暖かみが感じられるので好んで使っています」

そこまで、しっかり性質を見て、
自分の作品に合う、合わないを見極めているんですね。
わたしなんて、和紙と聞いただけでも、いいんじゃないかと思うのに
市販か手作りかで、どう違うのかなんて、考えた事もありませんでした。
和紙に自分で色をつけていくんですものね。
作品にあわせて、紙の色から作っていく。さすがですね。

さて、ここまでご説明いただいても、
どうも切り絵の構造がよくわからない、ちてな。
紙1枚に絵を描いて、どこを黒く残すかを決めて、
切るトコを切って・・・なんだか頭がこんがらがってきました。
すると、己夢さん、一枚の絵を実際に額から出してくださいました。

「下絵のときに、この色の紙がいいなと決めて、染めて切ります。
 これが一番下で、上にこうなって、さらに上がこれで・・」
と、目の前で、ぴらぴらと重なっていきます。
とっても繊細で吹けば飛びそうな美しさ。
えええ~!!こんな構造になってるんだ~!
っていうか、こんなの見せて頂いちゃってすみません!
ご丁寧にご親切に、ありがとうございます!
わたしは、つくづく、果報者です(涙)
皆様にお見せできず、ごめんなさい☆

ではでは、素敵な作品の数々をご紹介していきますね。

「紅葉はらはら」
背中に存在感がありますね。廊下と障子と舞い散る紅葉。
しっとりと、静かに流れております。

「風」
まさに、秋の枯葉と金色のすすきが風になびいて、
猫ちゃんの横顔がりりしいです。
耳と頬部分がうっすらピンクなのが、可愛いです。

「猪鹿蝶」
こういうのも、結構好きですよ♪
よく見ると、猫。さりげなく猫がいるのがいいです。

「花札は、遊ばないんですけど、絵を見るのが好きです。
 タロットカードを作りたいですね」と己夢さん。
是非、作ってください~☆とっても素敵なんじゃないでしょうか!

「くつろぎ」
ちょっと見づらくてごめんなさい。透明の長方形の額。
こういう見せ方もあるんだなあ~と感心します。お洒落ですよねえ♪
緩やかな腰のライン。撫でたくなります♪品がある猫ちゃんです。

万歳!している猫ちゃんたち。上からとってみました。
なんか、にくめない可愛い顔ですよね*
上から見ているせいか、「抱っこして~♪」にも見えます*

「ともだち」
よく見ると、目の部分が黄色になってて立体的です。
そういう細かいことに気がついたら、なんだか
とっても気になってしまい、目が離せなくなってしまいました。

「花」と「よつば」
この2つは、手前のお花と、背景の柄がとっても可愛くて好きです。
ある提案をしたら、「それいいかも」と己夢さんに言われたので、
嬉しいです。是非いつかそんなものができたらいいなあ♪

「月」
青い猫と三日月という、わたしが大好きなたまらないシチュエーション。
しん、とした深い静かな時間を感じます。

「シーンと静まり返った空気を表現したかったんです。
 どの作品も、自分のインスピレーション、雰囲気に合うように仕上げました」

「みどりのベッド」
こちらは個展のDMにもなった絵。緑、黄色のお花のふかふかの、
いい香りがする、ベッドにうずもれる猫ちゃん。
お目目がオレンジ色なのが、とってもいいですねえ。

「夜明け前に」
夜が、しらじらと開ける朝を迎えるべく、
目に見えない大きな力で動いているような感じがします。
木と植物が静かに天に向って伸びようとしています。
生まれるイメージでしょうか。
伸びる植物とまるで炎のような仰ぐ木の枝。
神聖な感じがしますね。思わず、息を止めそうになります。

「秘密の場所だよ」
三日月が静かに、見守っているのかな。
2匹の猫ちゃんの頬がうっすらピンクです。
青い夜に小鳥が見張りをして、草花がありたけ伸びて隠してくれます。
真ん中で折って閉じたら、ぴったりくっついて隠れてしまうような。
草花の丸い、流れるようなツルや、
しずくのような夜露のような、丸い柄が、とても魅かれます。
己夢さんの切り絵に出てくる、こういう、
丸いくるんとした、つるみたいなのが好きです。

「曲線は動きがありますよね。止まらない。
 いつでも、そこから動き出しそうで、あたたかみがありますよね」

そうか、なるほど~。なんだか、嬉しくなってきました。

「花のかおり」
風に吹かれて、いい香りがしているのが伝わります。この作品、好きです~♪

「止まってるんじゃなくて、流れをイメージしています。
 風の流れ、その場の雰囲気が感じられるよう、流れというのを意識しています」
と己夢さん。
みなさんのところも、香ってきますか?

今回の個展で、わたしが一番気に入ったのは、こちら。
「蝶と舞う」白猫ちゃんが蝶と遊ぼうとしてますの。
戯れようとしてますの。この手で掴もうとしてる体勢、角度がたまりません!
手前にある、ピンクのお花もまたとっても可愛くて☆
猫ちゃんの肉球と、頬がピンク色なんです。
可愛い~~~!!!またお目目が青いんです、ここも素敵!

「青い目が好きなんです。
『みどりのベッド』では、オレンジ色でしたけど、
 白い猫だと、目は青くしちゃいます」

なるほど。もう、この切り絵はほんといいですね。
お花と植物の茎の部分のくるんくるんも素敵だし。
蝶がはためいているのも感じます。わたしも舞いたい~♪

「11月末に、藤沢の鵠沼画廊で、3人展をやるんです。
 私の父と、母と3人でです。毎年、6月、11月と年2回開催しています」

親子で展示会なんて素敵ですね~☆
音楽一家が家族揃って演奏会!みたいですね*

「父は彫金、シルバーアクセサリーで、母は服飾。
 きれをとって、デザインして、縫っていくという作業を見ていると、
 ものを作る楽しみをくれるものなんだなと思いますね」

己夢さんは、切り絵で、和紙の色を染める所から、
デザインしたテーマで切り絵を作っていく
(浮き彫りにしていくという感じが、わたしはしました)
己夢さんのお母さんは、布を用意して、切って縫い合わせて形にしていく。
方法や出来上がった物は違うけれど、
同じなんだなと、思いました。さすが親子ですね!

「猫の額さんは、OPENする前に、
 たまごの工房さんのTシャツ展に参加していたときに、
 木村さんが見て下さったのがきっかけで、置かせて頂くことになりました。
 それまでは、年2回、デパートの手作り作品展に出していたんです。
 今回も2年ぶりの個展でしたが、また再来年、個展を開催する予定です。
 この猫の額さんの展示スペースが調度良いです」

にっこりと満足そうな表情をされた己夢さん。
次は再来年なんですね~♪と、はしゃぐと、
「疲れていると、いいものが作れないんですよね」

会話のはしはしに、自分のペースを大事にする、頑張り過ぎない、
無理しない、肩の力を抜いて、流れるままに、止まらず流れていこう、
そんなお考えが伝わってきました。そこには、固執しない、とらわれない、
受け入れるという、強さもあると思いました。

己夢さんの個展を見て思ったのは、森羅万象。
生まれて死ぬまでの間に、命という命は、常に流れ進んでゆく。
全く同じに見える風景も、いつも少し違う。
己夢さんの切り絵をみていると、
心の中にある羅針盤が、カチッと一瞬呼応する時があります。
そして次の瞬間には流れていくのです。
己夢さんの切り絵を見ていて、いつまでもあきない、
ずっと見ていたいと思えるのは、その呼応する時間が
あまりにも心地よくて、かけがえがないからだと思うのです。

太陽は沈むのを知っている。月は欠けるのをためらわない。
やがて昇り、やがて満ち、夜はさらりと明け、1日がはじまります。
植物は芽吹き、咲き、枯れていきますが、土に戻る時、振り返りません。
虫も魚も蝶も鳥も、生きるために生まれて、命が終る時は
ぜんぶを受け止めて、この世とお別れをするのみです。
そこに悔いや恨みや憂いはありません。
みな、命は、生かされるまま、生きている環境の中で
大きな潮の中で、生きるまま、生きている。
その中に、勿論、わたしたちがいるのです。

命という大きな流れの中にいる、人間。
人の最大の特徴は、各々ひとりひとりが、
かけがえのないもが違うということだと思います。
全く同じという人は、いないことでしょう。
そこが人の面白さであり、醍醐味であり、生きる意味だと思います。

わたしが2年ぶりの、己夢さんの個展を、
このタイミングで観賞することができたように、
皆さんにも、いつどこでなにとすれ違うかもしれない、
幾千の出会いがあることでしょう。そこでなにをどう感じるかは、
すべて、その人が何を大切にしているかによって
違ってくるということだと思います。

わたしは、己夢さんの個展を見て、頭の上のアンテナが
少し伸びたような嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

「とどまる。今の現状に満足することは考えられない。
 粘土作品でも、作ってる方はたくさんいます。
 同じように作ろうと人真似しても、同じようには作れないんです。
 回りにあわせようと頑張るのではなく、
 常に新しいものを吸収していく、
 流れに任せて、自然に流れていくこと。
 心の中の時間の流れを、作品に出していきたいです」

心の中の時間の流れを、出したい。なんて、素敵なお言葉でしょう。

繊細な中にも、存在の時間とぬくもりや温度が伝わってくる立体感。
美しい技術を使って見せて下さっている、己夢さんの世界。
ほんとに、己夢さんの個展に来て、よかった。
作品を実際に見ることができて、よかった。

己夢さん、素敵な時間を過ごすことができて、
とっても嬉しくて、楽しかったです。どうもありがとうございました☆

●己夢さん「猫瞳幻灯」
http://lapis.plala.jp/~kim/

●猫雑貨&猫ギャラリー 猫の額
http://www6.speednet.ne.jp/~nekojarasi/
〒166-0003  東京都杉並区高円寺3-20-11 1階
TEL&FAX:03-3317-3115  OPEN:am12:00~pm8:00 木曜定休
ACCESS:丸の内線新高円寺駅より徒歩2分/JR高円寺駅南口より徒歩9分
詳しい地図はこちら


◆実は、この日、とびきり素敵な最高なお買い物をしてしまいました♪
ちてなコレクションに載せてますので、こちらもどうぞ♪↓

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